Aldus novaの出自
只今制作中の活版作品にAldus novaを使おうと色々調べていて今更ながらAldus novaの出自を知る。発端は、Aldus novaの字形検討をしていてBook Italicの「i」とBold Italicの「i」の字形が違うのに気付いたことから。Zapfさんの癖なのかなと思いZapfさんの制作された他の書体を眺めていたら、Aldus Nova Bold Italicの「i」の字形がPalatino Nova Bold Italicの「i」の字形とほぼ同じで、なぜ?!と思いLinotype社websiteのAldus novaの説明を読んだり(Aldus novaの説明なのに見出しはPalatino Novaとなっているので初めはギョッする)、小林章さんの著書『欧文書体2』p.92–p.97を読んだりして納得(今まで読んでないのバレバレ)。
左:Aldus Nova Book Italic、中:Aldus Nova Bold Italic、右:Palatino Nova Bold Italic (画像はMyFonts.comより引用) |
stemの入りのカタチやstem自体のボン、キュッ、ボンさが違う。Aldus NovaとPalatino NovaのBold Italicはほぼ同字形で区別がつかない。
結論としては、AldusはPalatinoの姉妹書体だということ。Palatinoは本来見出し用に設計されたもので本文用に別途Aldusを制作したとのこと。
道理で似ているわけだ。
Aldus novaの、Book ItalicとBold Italicの字形の違い
こうしてAldus novaの出自は理解できたけども、それに気付く発端となったBook ItalicとBold Italicの字形の違いをローマ字全てで比較してみたら、小文字で上記の「i」の字形差と同様の違いのものが何点かある他に、はっきりと字形の異なるものも4点あった。Aldus Nova Book Italic (画像はMyFonts.comより引用) |
Aldus Nova Bold Italic (画像はMyFonts.comより引用) |
Palatino Nova Bold Italic (画像はMyFonts.comより引用) |
Aldus novaのBook ItalicとBold Italicとを比較すると、赤はstemの入りのカタチが違う字(tはbarの左側のカタチが違う)、青は字形そのものが違う字である。
こんなにも字形が異なるが、それはAldus nova Bold Italicの出自がPalatino nova Bold Italicであるためのようだ(あくまで推測)。
(どうしてAldus nova Bold Italicの字形をBook Italicの字形に合わせなかったのかは、またいずれ尋ねてみようか。)
Aldus novaのfi合字
さて最後に、Aldus novaのfi合字について。通常「fi」と並んだ場合、合字にすることが推奨されているしソフトウェアで自動的に変換もしてくれるのだけども、Aldus novaの場合合字にならない。正確に言うと、合字になっているが「i」のdotは生きたままなのである。これにはビックリした。なんせfi合字は「f」の頭を「i」のdotの位置まで延ばして「i」のdotは無くすのが良いと思い込んでいたから。dotがあってもおかしくなければ良いのだな。
左:合字指定なし / 右:合字指定あり Aldus nova Book (画像はMyFonts.comより引用) |
合字の方は、そっと手をつないだ感じ。
実は、頭までむぎゅ〜と合体しないfi合字は多くの書体であるみたい。
以上、勉強不足も甚だしいなオレ、とほほ、もっとがんばろう、の巻でした。
参考文献
website
- Aldus® nova font family - Linotype.com
- Palatino® nova font family - Linotype.com
- Aldus® Nova Pro - Webfont & Desktop font « MyFonts
- Palatino® nova - Webfont & Desktop font « MyFonts
書籍
- 小林章著. 欧文書体2 定番書体と演出法. 美術出版社. 2008
- Lawson, Alexander. Anatomy of a Typeface. David R. Godine, 1990 (2010)
- Zapf, Hermann. About Alphabets. The MIT Press, 1970
- Kelly, Jerry. About more alphabets: The types of Hermann Zapf. The Typophiles, 2011