2011年7月13日水曜日

【もじ見】コロタイプ印刷の便利堂様へ伺う

いやぁ、具沢山で初見初聞のものばかりで中々頭の整理が付いていませんが、諸資料を参考にしつつザックリと見学記を。

なに活様(@nanikatsu)のご手配に便乗し、コロタイプ印刷の便利堂様へ伺ってきました。暑い暑い京都市内、全く空気が動かず熱が籠って暑さ倍増、そんな時節の見学は皆さん汗だく。
便利堂様に到着し、「コロタイプとは」という説明書きを頂きしばし眺める。ワタクシ管理人は、事前に書籍『印刷に恋して』で予習していきましたが、またここでなるほどと分かった気になる(全然分かってませんでしたが(苦笑))。

で早速、最初は印刷工房の方から。コロタイプ用印刷機が4、5台ほど(すみませんうろ覚えです)がズラッと並び、印刷の真っ最中。そんな中恐縮しながらカメラをパチリ。各解説は、頂いた資料などを元にしています。


黄色っぽい刷版(黄色いのが感光性ゼラチン)に湿し水を行って調子をつくる作業。版の焼付けされていない部分は軟らかく、湿し水をすることで水分を吸収し僅かに膨らみインクを弾くそうです。コロタイプはインクを弾く部分と乗る部分とで構成されている点ではオフセット(平版)と同じですが、インクの濃度はインクの乗る部分の深さで決まるという点では凹版と同じで、要は平凹版的な印刷手法です。また印刷は1色ずつ特色を行い、濃淡は連続階調で表現するため淡いところも(網点表現とは違い)非常に綺麗に表現されます。カラーコロタイプ(昭和30年代に自社開発)の場合、全特色で10版重ねになったりなどします。こうなると本物と区別付きません。またこの版は300枚程度の耐刷能力ですので大部数用ではありません。このような性質から主に国宝・重文級資料の複製や、美術品の少部数ものなどでよく使われるとのことです。


湿し水を行った後、余分な水分を拭き取るためのローラーを刷版上で転がす。このローラーを「官報」というらしい。当初は本当に官報を巻いていたからということらしい(『印刷に恋して』より)。ワタクシ管理人が見た限りでは何らかの紙が何重にも巻かれていました(転がしている途中で紙が破けたので)。


使用するインクは相当固く(顔料含有率60%で耐光性を持ち、長期保存に最適)、印刷機にはヘラで1、2回擦り付ける程度でしたが、よく考えたら印刷機が稼働している処に餅搗きの合いの手を入れるようにしてインクを擦り付けてました。よく考えたら危ない(『印刷に恋して』に書かれている通りでした)。活版印刷機のように版が動きますが、こちらではインク壷まで一緒に動きます。そのためローラーがシリンダーとインクローラーの一人二役の大活躍。


次に、刷版の制作現場へ。
こちらでは、毎朝(!)厚さ10mmのガラス板に感光性ゼラチンを塗布して刷版を手作業で手作りしています。この作業は午前中のみにしか行われませんので、今回の見学(午後)では見ることが出来ませんでした。この作業は、刷版に埃などが付着しないよう上半身裸でエプロンを付けてされるとのこと。後、版面に均等に伸ばすのは版をこれまた手で前後左右に揺らして伸ばしますが、この辺は経験と勘だそうです。


そして、版焼き台内で出来た刷版と製版フィルム(ネガ)を密着させてセットして固定し台を回転させます。



その後、強烈な紫外線を上から3分程度露光させます。




露光が終了し、台から取り外すと見事に感光されています(刷版の黒い部分が感光部分)。
因みに、この刷版は1日しか持ちません。その日の終わりにゼラチンをはがすために苛性ソーダのプールに漬け置きするそうです。また、ゼラチン部分を触ってもその版はボツになるらしいのですが、ワレワレはベタベタ触らせて頂きました(もちろん見学用に用意されたものをです)。ゼラチンが塗布されているのでプニプにしているかと思ったのですが薄いため意外に固い感触です。


次に製版部門を見学させて頂きましたが、写真撮影を忘れてました。
ここでは、製版フィルムを制作します。撮影時に粗く4版に分解して撮影してネガフィルムを作り、そのネガフィルムに、必要な色のみ抽出するための「色の取り出し」作業をします。こちらも完全手作業で丁寧に不要な部分を潰していく根気のいる作業です。カラー版の場合、何色に分版するかはその都度打合せして決めていくそうですので、作業途中で色数が増えたり減ったりするそうです(見せて頂いたものは10版!ありました)。


そして最後が、撮影室。
便利堂様までは基本原寸で(諸事情でそうでない場合も時にある)ネガフィルムをつくるために(フィルムの最大寸法71.1×55.9 cm!までOK)、カメラも必然的に大きくなります。このカメラで4色(紫・緑・赤・黄)のカラー分解フィルターを使って、黄・赤・青・墨の4色に粗く分解したネガフィルムを作ります。ただ、現在では撮影フィルムの生産自体が縮小・中止していっているというご時世、何千枚もストックしているそうですが、新しい案件では最初からデジタルカメラで撮影・処理しているそうです。

カメラのスタジオ側全景

レンズ部分

レンズ部分

レンズ部分アップ

レンズ部分アップ

反射板

原画を置く台

暗室側:蛇腹内部

暗室側:蛇腹内部

暗室側:ガラス板とフィルムを置く台

暗室側:ガラス板

暗室側:フィルムを置く台と操作ボタン

暗室側:ガラス板アップ





これにて見学は無事終了し、嬉しいことにコロタイプで刷ったものまでお土産に頂いておいとましようとしたところ、玄関口に古い(明治時代!)手動石版印刷機が展示されていて、数十年前までこれでも印刷されていたということです。




石版


以上、具沢山の見学会でありました。



2 件のコメント:

  1. 匿名7/13/2011

    素晴らしいです。
    以前勤めていた会社で先輩が「昔は刷版はガラスだった」とびっくりのことをいっていたのですが、これのことだったんですね。
    素晴らしい活動ですね。素晴らしいです。すごいです。尊敬します。

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  2. コメントありがとうございます。
    色々と企画したり、他の方の企画に便乗したり、色々なこと経験させて頂いてます。その内このような経験を生かした何かをしたいと妄想しておりますが、未だ妄想段階です。
    これからもご贔屓にブログをお読み頂ければ幸いです。

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