2013年1月10日木曜日

今更ながらAldus novaの出自を知りそのItalicの字形の違いとfi合字のかたちに驚くなど


Aldus novaの出自

只今制作中の活版作品にAldus novaを使おうと色々調べていて今更ながらAldus novaの出自を知る。発端は、Aldus novaの字形検討をしていてBook Italicの「i」とBold Italicの「i」の字形が違うのに気付いたことから。

Zapfさんの癖なのかなと思いZapfさんの制作された他の書体を眺めていたら、Aldus Nova Bold Italicの「i」の字形がPalatino Nova Bold Italicの「i」の字形とほぼ同じで、なぜ?!と思いLinotype社websiteのAldus novaの説明を読んだり(Aldus novaの説明なのに見出しはPalatino Novaとなっているので初めはギョッする)、小林章さんの著書『欧文書体2』p.92–p.97を読んだりして納得(今まで読んでないのバレバレ)。

左:Aldus Nova Book Italic、中:Aldus Nova Bold Italic、右:Palatino Nova Bold Italic
(画像はMyFonts.comより引用)

stemの入りのカタチやstem自体のボン、キュッ、ボンさが違う。Aldus NovaとPalatino NovaのBold Italicはほぼ同字形で区別がつかない。

結論としては、AldusはPalatinoの姉妹書体だということ。Palatinoは本来見出し用に設計されたもので本文用に別途Aldusを制作したとのこと。

道理で似ているわけだ。


Aldus novaの、Book ItalicとBold Italicの字形の違い

こうしてAldus novaの出自は理解できたけども、それに気付く発端となったBook ItalicとBold Italicの字形の違いをローマ字全てで比較してみたら、小文字で上記の「i」の字形差と同様の違いのものが何点かある他に、はっきりと字形の異なるものも4点あった。

Aldus Nova Book Italic
(画像はMyFonts.comより引用)

Aldus Nova Bold Italic
(画像はMyFonts.comより引用)

Palatino Nova Bold Italic
(画像はMyFonts.comより引用)

Aldus novaのBook ItalicとBold Italicとを比較すると、赤はstemの入りのカタチが違う字(tはbarの左側のカタチが違う)、青は字形そのものが違う字である。
こんなにも字形が異なるが、それはAldus nova Bold Italicの出自がPalatino nova Bold Italicであるためのようだ(あくまで推測)。
(どうしてAldus nova Bold Italicの字形をBook Italicの字形に合わせなかったのかは、またいずれ尋ねてみようか。)


Aldus novaのfi合字

さて最後に、Aldus novaのfi合字について。

通常「fi」と並んだ場合、合字にすることが推奨されているしソフトウェアで自動的に変換もしてくれるのだけども、Aldus novaの場合合字にならない。正確に言うと、合字になっているが「i」のdotは生きたままなのである。これにはビックリした。なんせfi合字は「f」の頭を「i」のdotの位置まで延ばして「i」のdotは無くすのが良いと思い込んでいたから。dotがあってもおかしくなければ良いのだな。

左:合字指定なし / 右:合字指定あり
Aldus nova Book
(画像はMyFonts.comより引用)

合字の方は、そっと手をつないだ感じ。


実は、頭までむぎゅ〜と合体しないfi合字は多くの書体であるみたい。




以上、勉強不足も甚だしいなオレ、とほほ、もっとがんばろう、の巻でした。



参考文献

website
書籍

2012年10月10日水曜日

関西に「和文と欧文」、立つ

2012年10月6日土曜日、関西に「和文と欧文」という1本柱が立った。

個人的には肩の荷が下りた感じ。

文字るは2年前、関西での「書・活字・組版などあらゆる文字好きの間を横断する場をつくる」ことを目的に開始。ただし、そもそも北摂の山間に籠り1人黙々と作業することをこよなく愛する人間(ただの人見知り)が、人を集めて何かしようなどという無謀な活動ゆえ、気まぐれお気楽で開催回数はそんなに多くはなかった。そんな文字るでも、微力ながら、文字好き同士が出会い繋がっていく手助けは出来たと思う。

欧文に関していえば、現在関西でもカリグラフィーやレターカッティングが経験できる環境にある。実はこれ非常にスゴイこと。いや、考えれば考えるほどスゴイな。カリグラフィーに関してはJ-LAFKCFに携わっているワタクシの師匠や色んな方が活躍してるし、レターカッティングは「小林さんのお友達」ゴードン恵美さんから直接教わってる方が何人もいる。
なので、これからの文字るは、欧文の補足的な活動を中心に開催していこうと思うので、これからもよろしくです。
(活版関連は今までと変わらずやっていきますよ〜)



ということで、「和文と欧文」の模様は一寸だけだけども以下に。



講演

鳥海さんと小林さんの掛合最高に面白い。
小林さんのお話はもう何度も聴いているので良く存じ上げてるけども、鳥海さんがあんな方だとはやられました(良い意味ですっ)。

鳥海さんと小林さんの掛合漫談

そうそう、途中小林さんが「大文字のß」のお話を一寸だけされたけども、その件ワタクシが昔はてなダイアリーにてまとめたエントリをおもいだしたのでリンクを貼っておく。参考文献も一通りリンクしてるので、「大文字のß」が気になる方は是非。



欧文WS

WSは小林さんの欧文に参加。
「WORLD TRAVEL BUREAU」を1文字ずつ切り取ってスペーシングを考えつつ3行に組む作業。
この字面見た時点で小林さんのいじわるが見えるでしょ(笑)

最初は「TRAVEL」から組み始める。

なぜ「TRAVEL」からでしょう?


次に「WORLD」と「BUREAU」の最初の文字「W」と「B」を組む。
このとき、『The Oxford Guide to Style (Language Reference)』などから選ばれた組み方の1例をご教示いただく。

左例が単純な左端合わせ、右が調整後

因みにこれは行末での調整例


こんな感じで「W」と「B」を組んだあと、残りの文字を組む作業に皆没入する。


最後、皆の組んだものを壁に貼り皆で見比べる。

ジャジャーン、どうでしょう

最後に、小林さんの講評


小林さんが仰ってたことには、欧文の文字組みに正解は「これだっ!」というものは無いということ。
実際、皆の組んだものは細かいところで各自の解決の違いがあって興味深かった。


ところで、具体的にどのようなことをしたかの説明を控えたのは、実際に体験してもらった方が良いことばかりなので。ワタクシの下手な説明など余計判り辛くなるばかりだし。



和文WS

続いて、鳥海さんのWSの模様。



レタリングして墨入れしていた模様だけども、ワタクシも欧文のWSに集中してたので具体的にどんなことをしていたのか良く分かっていない。。。


以上、「和文と欧文」もvol.1は無事終了、このあと夜の十三へ皆繰り出すのであった。
そしてvol.1と銘打ってあるだけに、今回だけでは終わらない模様。次回以降も期待してるよ〜。


追伸:
もうすぐ年末だし、とりあえず文字忘年会、する?
忘年会といいつつ皆に文字への熱い気持ちを語ってもらおうと思ってる。。。

2012年9月25日火曜日

x-heightに振り回される

x-height、字面を素直に見れば小文字xの高さのことだと判ると思う。大抵の説明では意味を広げて一般に小文字の高さ(小文字のうち、ascenderとdescenderがある文字はそれを除いた部分で、overshoot部分は微小なので取合えず無視)をいう。

しかし、用語集によっては一寸混乱させられた。
参照元の一つ、Typography Terms - Proxima softwareを例にすると、
mean line
The line on which the top parts of most of the lowercase letters set (not the ascenders). Also called x-height. The top (imaginary) point of all lowercase characters without ascenders.
x-height
The height of those lowercase letters such as "x", which do not have ascenders or descenders. The lowercase 'x' is used for measurement since it usually sits squarely on the baseline.

上記の通り、mean lineの語義説明では「mean line=x-height」で「x-heightは(仮想)線」と読み取れてしまうが、しかしx-heightの語義説明では「x-heightは高さ」と明記されているので、このような説明だと英語読解の拙いワタクシなど混乱の極み。

なんだかなぁと思いつつ、結局小文字の高さを指す語ということで落ち着くだろうと思って調べてみたら…。




語義 definitions

  1. baselineからascenderとdescenderを除いた小文字の最上部までの高さ。baselineからmean line 1までの高さ。
  2. 小文字のうち、ascenderを除いた最上部を通る仮想の水平線。x-height 1の最上部を通る仮想の水平線。【同】mean line 1

上記語義2の通り、「x-heightは(仮想)線」と説明した文献を2つ発見。OMG

1つはあのTDCの用語集。
An imaginary line at the top of the lowercase x that sets a height guideline for flat letters and letterparts. Curved letters usually pass through a bit in order to appear the same height as the x.

Type Directors Club : Views : Type Dictionary

もう1つは
An imaginary line that establishes a common height from the baseline for the lower-case letters without the ascenders or descenders and is derived from the height of the lower-case x.

Haslam, Andrew. Lettering: A Reference Manual of Techniques. Laurence King Publishers, 2011, 240p. (p.9)


…流石にこの語義2は誤用だと思うんですが。

皆さんは語義1で使用してくださいな。
(語義1の参照元などは拙WIKIの「x-height—辞時源諸説」をご覧あれ)






このように、所謂「Type Anatomy」、「Type Terminology」、「Glossary of Type」などと呼ばれるものを調べ始めたきっかけは、不明な用語をちょっと調べたら、まさにこのx-heightのように混乱させられることがあって、掘り下げていったら嵌り込んでしまったというワケ。

今回でこのブログ上で用語解説するのはひとまず終了。もっと詳細を知りたいという奇特な方は、拙WIKI「辞時源諸説」のtype anatomyをご覧あれ。

2012年9月24日月曜日

mean lineとwaistline、皆さんどちら派?

先日発刊の『書体の研究vol.11』やそのUstreamでも少しだけ取り上げられてもいましたmean line (meanline)とwaistlineについて。


mean line (meanline)

1.小文字のうち、ascenderを除いた最上部を通る仮想の水平線。x-heightの最上部を通る仮想の水平線。

(Typeface: Adobe Garamond Pro Regular)

A horizontal guideline indicating where the tops of lowercase letters without ascenders appear to align. Often referred to in an imaginary sense. Sometimes referred to as x-line or x-height line.

Font Glossary - Fonts.com

他、計8例(詳細は辞時源諸説を参照のこと)。




2.baselineとcapital lineの中間を示す仮想の水平線。

(Typeface: Adobe Garamond Pro Regular)


Designing Type p.10の書影【Google Books】(図解あり)

Cheng, Karen. Designing Type. Laurence King Publishing, 2006, 232p. (p.10)

The mean line or midline is half the distance from the baseline to the cap height. This may or may not be the x-height.(後略)

Mean line - Wikipedia, the free encyclopedia

上記2例(詳細は辞時源諸説を参照のこと)。


字面の意味的には上記2の方が妥当なような気がするが、使用例からいうと圧倒的に1の方。但し、Wikipedia英語版では2の定義が本来的であるという言い回しをしている。




waistline

mean line 1に同じ。

Upper boundary of the body height in writing or type.

Folsom, Rose. The Calligraphers' Dictionary. Thames & Hudson Ltd, 1990, 144p. (p.128)
【引用者注】ここでのbody heightはx-heightに同じ。

他、計2例(詳細は辞時源諸説を参照のこと)。

つまり、mean line (meanline)は、waistlineに同じ。




実は、参考文献からもわかるように、waistlineは主にカリグラフィー用語で、タイポ関係で用いられている例は多くない。日本では『書体の研究vol.11』と『文字の組み方』で使用例がある。といっても、上記のwaistlineで参照した定義では、タイポ関係でも用いられることが明記されているので、余りこだわる必要もない




mean line (meanline) 1・waistlineの同義語として他に、headlinemedianmidlinex-linex-height linex-height(!)があるのだけれど、ややこしいことに、mean line (meanline) 1・waistlineとx-heightを混同した使用例が見受けられる。こちらの方が悩ましい。。。

2012年9月7日金曜日

[TYPE ANATOMY] writing line

これは、現状カリグラフィー関連でしか見聞しない語。



語義 definitions





図解 illustrations

baseline



参考文献など references, etc.

Synonym of baseline, but may be preferred when speaking of a whole page of writing, as opposed to a student's practice sheet.

Folsom, Rose. The Calligraphers' Dictionary. Thames & Hudson Ltd, 1990, 144p. (p.131)
A Book of Formal Scriptsのp.8より)
Woodcock, John. Knight, Stan. A Book of Formal Scripts. A & C Black Publishers Limited, 1992, 80p. (p.8)

[TYPE ANATOMY] topline

ほとんど見たことも聞いたこともない語。実は、以下の通りascender lineの同義語で、出典は2つのみ。ただその一つがRobert Bringhurst著の『The Elements Of Typographic Style: Version 3.0』という。



語義 definitions





図解 illustrations

ascender line



参考文献など references, etc.

Whether written by hand or set into type, the Latin lowercase alphabet implies an invisible staff consisting of at least four lines: topline, midline, baseline and beardline. The topline is the line reached by ascenders in letters like b, d, h, k, l. The midline marks the top of letters like a, c, e, m, x, and the top of the torso of letters like b, d, h. The baseline is the line on which all these letters rest. The beardline is the line reached by descenders in letters like p and q. The cap line, marking the top of uppercase letters like H, does not necessarily coincide with the topline of the lower case.
Round letters like e and o normally dent the baseline. Pointed letters like v and w normally pierce it, while the foot serifs of letters like h and m usually rest precisely upon it.

Bringhurst, Robert. The Elements Of Typographic Style: Version 3.0. Hartley & Marks, 2004, 384p. (p.322)
Typography - Planet Of Tunesより)
Typography - Planet Of Tunes「Staff」の図解

[TYPE ANATOMY] beardline

ほとんど見たことも聞いたこともない語。実は、以下の通りdescender lineの同義語で、出典は2つのみ。ただその一つがRobert Bringhurst著の『The Elements Of Typographic Style: Version 3.0』という。



語義 definitions





図解 illustrations

descender line



参考文献など references, etc.

Whether written by hand or set into type, the Latin lowercase alphabet implies an invisible staff consisting of at least four lines: topline, midline, baseline and beardline. The topline is the line reached by ascenders in letters like b, d, h, k, l. The midline marks the top of letters like a, c, e, m, x, and the top of the torso of letters like b, d, h. The baseline is the line on which all these letters rest. The beardline is the line reached by descenders in letters like p and q. The cap line, marking the top of uppercase letters like H, does not necessarily coincide with the topline of the lower case.
Round letters like e and o normally dent the baseline. Pointed letters like v and w normally pierce it, while the foot serifs of letters like h and m usually rest precisely upon it.

Bringhurst, Robert. The Elements Of Typographic Style: Version 3.0. Hartley & Marks, 2004, 384p. (p.322)
Typography - Planet Of Tunesより)
Typography - Planet Of Tunes「Staff」の図解